夜開け前に起きたときには、、夜空には星空がいっぱいだった。 今日も天気が良さそうだ、と思った。 しかし、朝、明るくなってみると、すでに山にはうっすらと雲がかかり始めている。 今日のフライトの予約時間は朝9時30分。 9時に天気情報が出るので、その時間にヘリコプター会社のオフィスに行かなければならない。 フライト時間まで雲よ広がるな。と心の中で念じるが・・・。 その願いも虚しく、雲はどんどん厚くなっていくようだ。 やっぱり昨日の夕暮れが最高だったな〜、とちょっと寂しい気分。 |
|
朝食を済ませ、9時前にオフィスに到着。 やはり「マウントクックは見えない」 とコース変更を勧められる。 フォックス氷河とマウントクックを巡るコースから、 フランツ・ジョセフ氷河とフォックス氷河を巡るコースへ。 マウントクックに未練があったので、 「時間をずらせばマウントクックは見えるようになるだろうか」 「今日は無理だ」 とはっきり言い切られてしまった。 心はすっかりヘリコプターに乗るモードになっていたので、マウントクックに心は残るもコース変更を受け入れる。 |
|
9時半にオフィスから送迎の車で飛行場へ向かう。 飛行場に到着するのとほぼ同時に上空からヘリコプターが舞い降りてくる。 まだ先の時間のお客があったようだ。 そのヘリコプターから前のお客が降りてくる。 顔が明るく、興奮しているようだ。 これはひょっとしたら期待できるかも。 |
アエロスパシアルAS350B |
ヘリコプターは6人乗りで、操縦者の横に2人。後部座席に4人座れるようになっている。 今回のお客はうちの4人と、あとは白人のカップルの2人。 前の座席の方が景色が良さそうなので、前に座りたかったが、この構成では仕方ない。 我が家は後ろに4人並んで座ることにする。 |
|
ヘリコプターの巻き起こす風の中、搭乗するために機に近づく。 すごいエンジンの音だ。耳が痛い。 座席に着くと、シートベルトとヘッドフォンを装着する。 ヘッドフォンを着けると騒音が幾分ましになった。 乗ったことがある人は分かると思うが、ヘリコプターはほんとにやかましい。 やかましくて言葉は交わせないので、パイロットは「OKか?」と言うように手を握り親指を上につきだして聞いてくる。 私は小指をつきだして答える・・・。パイロットの表情は変わらない。 どうやら冗談は通じなかったようだ。 中指をつき出してやろうかと思ったがさすがにそれはやめた。 空の上からたたき落とされたら困る。 仕方ないので親指をつきだして答えた。「OK} |
|
エンジンの回転数が上がり、窓の外で砂埃が舞い上がる。 次の瞬間、ふわっと空に舞い上がる。 以前に富山でヘリコプターに乗ったときは、激しい加速度で気分が悪くなったが、今回の離陸は丁寧で、ほっ。 |
|
雲の切れ目から山が見える |
ヘリは一旦海側に進路をとり、続いて大きく180度のターンをし、山へ向かっていく。 最初はフランツジョセフ氷河に向かうようだ。 雲の切れ目から白い雪をかぶった大きな山が見えてくる。 どうやら今日の雲は低いようだ。雲の上に出れば期待できるかも。 |
前を見ればヘリは雲の上に出ようとしている。 大型の飛行機では前が見えないが、ヘリは進行方向が丸見え。 雲を飛び越えて上に出る感覚は、高揚感というか開放感というか、なんとも言えないいい気持ち。 |
雲の上に出るぞ |
サザンアルプスが見えてきた |
そして、その雲の向こうには雄々しい雪山の連なりが。 素晴らしい、ビューティフル、ワンダフル、グレート、ファンタスティック、ハラショー。 もうまったく言葉で表現できないです。 |
眼下には氷河が流れている。 いや本当に流れているように見えます。 写真では見たことがあるけれど、生はやっぱりでかい。 その大きさを身にしみて感じることができます。 |
目の前に迫るフランツジョセフ氷河 |
左の高峰がマウントタスマン |
ヘリは向きを変え、尾根を飛び越えようとしている。 映画などでは良くある場面だが、これも生で見ると迫力が違う。 ぐぅーんと尾根がヘリにせり上がってくるように迫り、「うぉーっ」と思った瞬間、尾根の向こう側の視界が開ける。 目に飛び込んできたのはMt.Tasman(3497m)の姿。 雲は全くかかっていない。眼下には大いなる雪原。 こんなのが自分の目で見られるとは思わなかった。 Mt.Tasmanの向こう側にはMt.Cook(3754m)の姿が見えるはずだが、これは雲を纏って、その姿がはっきり見えない。 |
雪原とアルプスのパノラマのまっただ中をヘリは飛ぶ。 天国にいるような感じだ。本当の天国なら困るが。 私はビデオ撮影とカメラ撮影に夢中。 Fox氷河の上流に出たところで再びヘリは向きを変える。 雪の棚が眼下に現れたと思ったら、その上にふわっと舞い降りた。 |
|
ヘリを降りて雪原の上を歩く。 すでに何人も歩いた跡がある。 ここは着陸場所に指定されているのだろう。 人の歩いていないようなところへ行っても、雪は結構締まっていて、足がズポッとはまりこむようなこともない。 |
素晴らしい景色 |
朝日に美しい陰影を見せる
|
目の前にはMt.Tasman、左手にはキャンセラードーム(Chancellor Dome)という丸い丘。足下にはFox氷河の源流。 まぶしすぎるくらいの日差し。 雪からの反射。 生きてて良かった。 |
パイロットがヘリを背景にポラロイドで写真を撮ってくれる。 氷河の解説入りの冊子にして売ってくれるそうだ。 子供たちは雪合戦。私と女房は景色に夢中。 時間はあっという間に過ぎ、もう出発時間。 今度は子供たちを前席に乗せてもらえた。 |
フォックス氷河の源流部 |
前席からの景色は良い? |
ここからはフォックス氷河の上空を下っていくだけ。 そんなに時間がかからずもとのヘリポートに無事着陸できた。 乗る前は墜ちたらどうしようとか考えてましたが、 乗ってからは、そんなことを考える暇もなく、また気流も操縦も安定していたので、まったく不安感は無かった。 |
雪原で撮った写真?もちろん購入しました。$20。ちょっと高い。 | 無事に帰還 |
興奮冷めずといったところだが、続いてマセソン湖(Lake Matheson)へ行く。 ニュージーランドで一番美しい湖らしい。 しかしそれも天気が良く、サザンアルプスが綺麗に見えていればだ。 空の上からは素晴らしい景色を堪能できたが、下界へ降りれば上には雲。 高い山は全く見えない。 まぁしかしここに来たからにはどんな湖か一度は見ておかなければ。 |
|
もののけ姫の世界だ〜 |
FoxGlacierの町から海側へ、車で5分ほど走れば、湖への入り口が見えてくる。 車を駐車場へ止め、歩き出す。 吊り橋を渡って森の中へ入っていく。 西海岸は雨が多いため、木が茂りやすいのか、とても深い森である。 人の手が入らない自然のままの姿を残している。 |
しばらく歩くと湖が見えてくる。 ・・・思っていたより水は綺麗ではない。 歩き出してから30分たっただろうか。 Jetty View Pointという湖につきだした展望台に到着する。 予想通り、マウントクックもマウントタスマンも雲の中。 残念。 天気が良ければこの湖一周のコースもあるようだが、今日は行ってもダメだろう。 もと来た道を引き返し、駐車場に戻る。 |
マセソン湖。晴れれば向こうに
|
さてさて旅の途中で忘れかけていたが、今日は大晦日。明日は新年だ。 明日はニュージーランドでも祭日なので、また銀行や店が閉まってしまうだろう。 今日中にまた両替と買い出しをしておかなければ。 そのためには大きな町に移動しなければ。 とりあえず今日の目的地を西海岸最大の町グレイマウス(Graymouth)とする。 昼食にパンを買い込んでいざ出発。 カーブの多い道で時間の割に距離が稼げず、疲れながらも6号線を休憩なしで走り、3時過ぎにホキティカ(Hokitika)の町に到着した。 |
|
ホキティカの町は思っていたより大きかった。 それに、グレイマウスまで行っていると4時を過ぎてしまい、銀行が閉まっている恐れがある。 そうなったら嫌なので、この町で両替と買い物を済ますことにした。 本日のレートは1$=70円程度で、ニュージーランド到着時と比べ相場は大きく変動していないようだ。 続いてショッピングセンターで買い物。 米や、肉などを購入した。 年越しそばも探してみたが、さすがにそばは見つからず(ダニーデンにはあった)、うどんを購入した。 |
|
買い物が終わり、グレイマウスへ向かう。 ホキティカ - グレイマウス間は直線区間が多くて走りやすい。 と思ったら、ニュージーランドで既にお馴染み、片側交互通行の橋である。 ウェストコーストの6号線は、交通量が少ないためか、片側交互通行の橋が多くて、それ自体は珍しくない。 ここの橋の凄いところは、鉄道まで同じ橋を使用していることだ。 車1台がやっと通れる幅の橋の上に線路が敷いてあり、車も列車もそこを通る。 橋を渡っている最中に向こう側から列車が来たら、逃げようがない。 ほとんど列車が通らないからこんなことをしているのだろうが、列車が来るときは車との兼ね合いをどのようにしているのだろう。 あらかじめ橋は通行止めにしておくのだろうか。 それにしてもここまでケチらなくても良いと思うが・・。 この鉄道と車の併用橋はグレイマウスに着くまであと1カ所あった。 |
|
このホリデーパークで年始を迎える |
5時前にグレイマウスに到着。 Greymouth Seaside Top10 Holiday Parkにチェックイン。 ここは名前の通り、海岸沿いにあるホリデーパークだ。 |
海岸に出てみたが、あまり天気が良くないせいか、冬の日本海のような灰色の暗い海。 波も高いので、すぐに退散。 |
ホリデーパーク前の海岸 |
ジャグジーでくつろぐ |
せっかくの年末だから、ジャグジーバスに入ることにする。 お湯につかるのはハンマースプリングス以来だろうか。 ゆっくり浸かって、今年一年を振り返る。 やっぱり湯船は最高。 |
今年最後の食事はスパゲティとシュニッツェル。 ビールとワインを飲み、家族トランプで夜は更けていった。 こちらでは紅白歌合戦も見られないので年が変わる前に早く寝てしまった。 |
|
ふと、夜中に打ち上げ花火の上がる音で目が覚める。 「ああ、今、年が明けたんだな」 心の中で「日本より4時間早いお正月だ。あけましておめでとう」 とつぶやき、再び眠りについた。 |